アコースティックギターの弦選び Martin AuthenticAcoustic Strings
愛用していたマーチンのギターの弦が昨年リニューアルしました。自宅の在庫がなくなったので、新しい製品を1セット、恐る恐る注文をしてみました。Martin AuthenticAcoustic(マーチン オーセンティックアコースティック)、どうでもいいけど長すぎませんか?
ギターの弦ごときに何を「恐る恐る」と大げさな、と思われても仕方ありませんが、これまでに費やした弦選びの時間と労力はそこそこ膨大でした。20年位前までは選択肢はあまりありませんでしたが、ネットが普及したころから急に選択肢が増えました。
選択肢のほとんどない中学生高校生の頃でも YAMAHA の弦だけは使えませんでした。主に Morris USA、たまに Morales Phosphor を使っており、大学生になった頃から Martin の弦を使うようになりました。1セット1000円、2セットで1400円くらいだったような記憶があります。1セットで二週間くらいしか持ちませんでしたね。使用済みですが、当時のパッケージを保管していました。懐かしいですね。
年に一回、正月には景気付けで Martin MARQUIS を買っていました。
しかしその MARQUIS の品質は下がり、2000年になってからは製造ロットに不備が生じたらしく、巻弦の巻が甘くなったみたいな感じになって使う気が失せてしまいました。スタンダードな M 3桁シリーズは、1日使うだけで交換したくなるほど短命になり、結局弦探しの旅に出ることになるわけで、膨大な時間と労力を費やすことになりました。
ギターも数も増え、どのギターにどの弦を使うのがよいのか、納得がいくまで試そうとしますからタチが悪い。国内だけでの調達では気がおさまらず、アメリカから個人輸入で何種類もまとめて買って試しました。さあ何度張り替えたか、もう数え切れませんが、ギターと弦はアメリカ製に限ります。
紆余曲折ありましたが、ここ数年は、Side&Back = Rosewood のロングスケールギターにはカスタムライト Martin MSP3050 (Bronze CustomLight Gage)、Side&Back = Mahogany のギターにはライト Martin MSP4100 (PhosphorBronze LightGage)に落ち着いていました。その落ち着いていた弦が昨年で廃番になってしまったのです。
Martin MSP というのは2000年以降に発売されたSP弦といわれる薄めのコーティング弦で、試しで何度か使ってみました。最初の頃のSP弦の印象はとてもよくなかった。1・2のプレーン弦がゴールドにコーティングされていたこともあってか、こもった感じというか、どうも切れがよくなかった。その MSP は時々こっそりと改良されていたみたいで、いつのまにかウェットな感じのサウンドになりました。どうも自分がイメージするアコースティックギターの音(ひと言ではとても表現できません)とは違うイメージのサウンドでした。
コーティング弦というのは2000年を越えて流行り出し、エリクサーというすごい長寿命の弦が走りでした。その後ダダリオをはじめ各社から発表されましたが、どうにもこうにもわざとらしいサウンドが多く、個人的には好きになれませんでした。
ということで、MSP を試しながらも少々値段が高い JohnPearse 600L という PhosphorBronze Light にしばらくの間浮気していた時期もありました。特にショートスケールのギターには相性がよかったですが、ロングスケールのレギュラーチューニングではテンションが強すぎました。SideBack=RoseWood のギターは、ネックが薄く、スキャロップド フォワードシフテッド Xブレイシングのボディーが華奢なので、ライトゲージ(約70kgのテンション)を張りっぱなしにしておくのはちょっと厳しい(腹が出る)。試行錯誤の末、カスタムライトを張りっぱなしにすることにしました。Phosphor でなく Bronze にしているのは値段のせいではなく、ギターとの相性というか、サウンドの好みからです。
自分の場合、サウンドがどうあろうとも、Martin のライトゲージには他にない魅力を感じていました。それはプレーン弦の1・2弦、左指で押弦したときの感触です。ライトゲージの1弦の太さは、メーカーに関わらず 0.012inch と記載されていますが、押弦する左手の指先で感じる感触は多少違いがあります。また音の太さも微妙に異なります。
個人的には、比較的落ち着いて太めのサウンドで、キンキンしない Martin のライトゲージのプレーン弦が大好きなのです。この一点で、浮気しながらも細々と Martin の弦を使うようにしてきました。巻き弦をダダリオ、プレーン弦をマーチンという組み合わせも何度か試しました。
そして数回のマイナーチェンジを経て、最終のSP弦(MSP4100/MSP3050)の落ち着いたサウンドに満足して、これからもずっとこれを使いたいと思っていました。
ところがこの MSP シリーズが終焉を迎えまして、新たな製品がラインナップがされました。MSP の後継は AuthenticAcoustic MA シリーズだと、どこかでみました。しかしAuthenticAcoustic MA シリーズは、三段階ある新シリーズの最廉価シリーズで、品番のラインナップからしても、1〜2日しかもたなかった M 3桁シリーズの後継ではないかという印象です。M 3桁シリーズの耐久性と品質を少し向上させて、値段をぐんと上げたという感じじゃないのかな。
三段階ある新シリーズとは、
1.Superior Performance(たぶん昔のスタンダード)
2.Marquis Silked(たぶん昔のマーキス)
3.Lifespan 2.0(コーティング弦)
Superior Performance の主な品番は下記のとおりです。
> Bronze(80/20)
Custom Light:MA175 ← M175
Light:MA140 ← M140
> PhospherBronze(92/8)
Custom Light:MA535 ← M535
Light:MA540 ← M540
このような経緯を経て「恐る恐る」、自宅在庫の切れた CustomLight Bronze Gage を1セット購入しました。値段も値段ですが、重要なのは品質と相性です。
とりあえず Blanchard に張って音を出してみました。以下、MSP3050 と MA175 の比較です。
・見た目上、MA175 のプレーン弦にコーティングは施されていない。
・テンションは MSP3050 < MA175 です。
・パワーは MSP3050 ≦ MA175、MSP3050 にあったペシャペシャ感はない。
・サウンドは妙な癖がなくて安心できる、レスポンスもよく立ち上がる。弾き手次第、ギター次第といえるかもしれない。
・M140 で顕著だった張りたてのジャリジャリ感は少なく、最初から落ち着いたサウンド。MSP と比べると、ややエッジが立っていて元気な感じ(数時間で多少は落ち着く)。
・チューニングの安定感は標準以上、耐久性は不明ながら、M 3桁よりは長いだろうけど MSP よりはかなり短いと予想します。
引き続き Light PhosphorBronze Gage (MA540)も購入しました。
ショートスケールの OOO-18S に張ってみました。MSP4100 と比べて、テンションは同じくらい、パワーはやや弱いかも、数日使ってみないと判りませんが、MSP の品質には及ばない感じ。Bronze を試してダメなら JohnPearse 600L に戻すかもしれません。
弦の値段もバカにはできませんが、もうしばらく気長に試そうと思います。現時点は、それぞれのギターに合う弦は以下のように考えています。
Blanchard the Bristlecone (LONG Scale) ⇒ Martin MA175 or MA170
このギターのトップは比較的柔らかめのイングルマンスプルースで、ブレイシングはスキャロップド フォワードシフテッド です。MSP3050 なら問題なかったのですが、 同じカムライトの MA175 だと腹が出てきて、張りっぱなしにするには少々危険を感じます。EXLight にするかもしれません(ナット溝の問題もあるので慎重にはなります)。
Santacruz OM (LONG Scale) ⇒ Martin MA175
Blanchard よりは頑丈だと思うので、MA175 で大丈夫だと思う。
Collings OM-1A (LONG Scale) ⇒ Martin MA540 or Martin MA175
これはライト張りっぱなしでも大丈夫なのですが、指が痛いので普段は半音下げています。ですので MA540 (普段は半音下げ) 、もしくは MA175 でいいかなと思います。でも JohnPeaese にするかも。
Toru OOO-18S (Short Scale) ⇒ Martin MA540 or JohnPearse 600L
そもそも相性は JohnPearse 600L のほうがよいので、値段を考えると MA540 は使わないようにするかもしれません。
Side&Back がマホガニー系のギターには Bronze を、Side&Back がローズウッド系のギターには PhosphorBronze が相性がよい、という解説を何度か見聞きした記憶がありますが、あまりに気にしないほうがよいですよ。自分の耳を信じましょう。
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JohnPearse(ジョンピアース) アコースティックギター弦 600L
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クリップ式 クロマティックチューナーを二台追加 KORG Pitchclip 2 / YAMAHA YTC5
四台のギターにそれぞれチューナーを付けっぱなしにしておくために、クリップ式のクロマティックチューナーを二台追加購入しました。これまで使用してきているのは KORG AW-2 が二台、今回追加購入したのは KORG Pitchclip 2 と YAMAHA YTC5 という機能が少ない廉価機種です。
アコギ本体だけでなく、チューナーに関しても一家言持ってはおりますが、必要以上にややこしいことはやめておきましょう。
4000円までなら出してもいいよといえるなら、間違いなく TC ELECTRONIC の クリップチューナー PolyTune Clip / UniTune Clip を買っていました。±0.02セントの高精度もさることながら、6弦同時チューニングという曲芸は一見に値しますし、ブランドの格が違います。
しかし ±0.02セントの精度を享受するためには、楽器のほうもそれ相応の調整がなされ、操作者にもそれ相応の知識とスキルが必要です。
例えばギターであればペグの精度も要求されます。最低でも 1:18 くらいのギヤ比は必要でしょう。倍音に関する基本的な理解や、調弦する弦は倍音の発生を抑えるために軽くミュートしておいたほうがいいとか、調弦しない弦はナットやブリッジからの振動を拾わせないために完全にミュートしておいたほうがよいとか、解放と12フレット実音とでバランスを取るであるとか、クリップ式のチューナーを適切に使用する際に求められる知識はいくつかあります。
ちなみに、聞き慣れないかもしれませんが、TC ELECTRONIC というのはデンマークの高品質ブランドです。名前で買っても品質的には大丈夫、プリアンプの性能がよいコーラスを使用していました。サウンドは好みなので、リバーブはUSA製のレキシコンを愛用してました。ベタではありますが、気持ちはいい。
そんな高級品はお呼びじゃない、1000円くらいで何とかならんかとおっしゃる御仁には、国産ブランドの KORG の AW-4G が良いです。初心者向きというか、一般的に必要な機能は搭載されていますので安心です。
いやいやもっと安く!、と仰せになるなら Pitchclip 2 か 、もしくは YAMAHA YTC5 が適当でしょう。これらは、ある程度判った人(求める機能を十分理解している)向けで、決して初心者向けというわけではありません。
私の場合、AW-2 を二台所有しているので、その後継機種である AW-4 はパスしました。でも、KORG のピエゾチューナーは歴史も長く、素人ギタリストにはお勧めできます。
YAMAHA はこれといった特徴は無くても、ソツのない製品を作ります。トヨタの大衆車とか、キャノンのコンデジって感じ。
SEIKO でもよかったたけど、BOSS は避けるかな。BOSS はマグネットピックアップからの信号には安定しますが、ピエゾ信号は苦手じゃないかという印象が強い(認識が古いかも)。
よくわからないけど、リスクは回避したいというのであれば、少なくともジャパンブランドにしておきましょう。近隣他国ブランドには手を出さないほうが、失敗の確率は減るでしょう。
実際問題、KORG、YAMAHA、SEIKO あたりの製品なら使用する上で致命的な問題はありません。ついでですので、もう少し突っ込んでみましょう。
スペック上の精度は AW-4G が一番高いようですが、平均率のギターで使用するだけなら、Pitchclip 2 でも YTC5 でも体感的には大差ありません。
そもそもギターは構造上完璧なチューニングはできません、開放で合わせても押弦すれば狂います。5フレット以下でしか使わないというのであれば話は別ですが、最終的にはチューナーのメモリを見ながら自分で微調整します。エレキギターのように弦長調整ができないアコギの場合、例えば6・2弦の開放はやや低めに合わせるのはごく普通のことです。
機能的には、これも AW-4G が一番多機能ですが、ごく一般的な機能でして、最初の一台にはお勧めです。値段の差はわずかですので、ひとつだけ買うなら、最初の一台にはこれが一番よいでしょう。
Pitchclip 2 と YTC5 には、ピッチ調整機能が搭載されていません。すなわちAの音は440Hzに固定されているということですが、普段使いなら全く問題ありません。
一般的にはA=440Hzとされていますが、ライブ会場のピアノを借りる場合は、ピアノに合わせますので、A=441Hz とか A=442Hz に指定される場合があります。控え室の扉に、「本日のA=441」などと貼り紙がある場合があります。またオーケストラでは必ずしも A=440Hzではなく、最近はA=442Hzだと吹奏楽経験者から聞きました。ピッチ調整機能は必要な場面はありますが、そんな場面がない人には、ピッチ調整機能なんか邪魔なだけです。
YTC5 は、パネルの角度の自由度が高く、調弦するのに見やすくて微調整もやりやすい。また、クロマティックの他、ピッチパイプのようなギターモードとかウクレレモードなど、いくつかのモードを選べます。これは不要というか邪魔。電源 On/Off ボタンと同じボタンを使わせる操作性を考慮すると、本当に邪魔なだけ(電源の On/Off の操作は長押しです)。そもそも、どの弦をどの音に合わせるか意識していないなど、全く理解できない、論外です。モード切替なんて不要です。
Pitchclip 2 はモード切替がないという点ではとても使いやすいです。最低限の機能しかないので、操作ミスもないからストレスもない。ただこいつは慣れないとパネルが見にくい。また、音の表示が AbCdEFG と大文字小文字が混在し、特にGはCと似ていて一瞬?となる。
また微調整がやりにくくて、自分にとっては許容範囲を超えています。オープンDとかDADGADのような変則チューニングをする場合にも、弦ごと(場合によっては曲ごと)の微調整を必要とする場合はありますので、総じて Pitchclip 2 は調弦しにくいといわざるを得ません。使いにくくて我慢できなくなったら、 KORG AW-4G に買い換えます。
最初のひとつを選ぶなら、KORG AW-4G にすると思います。ピッチ調整機能は不要と書きましたが、一台くらいはピッチ調整機能が搭載されたチューナーを所有しておいた方が良いです。KORG AW-LT100G もよさそうなのですが、単四電池を使うということでやや重そう。軽いのがいいですよ。
追加で買うなら、所有しているものと同じものか YAMAHA YTC5 がよいと思う。パネルが見やすいので、微調整もやりやすい。KORG に比べて、適度に鈍感なことに加え、弦の振動が減衰していっても、インジケーターの動作が比較的長く安定しているので使いやすい。モード切り替えを割愛して、クロマティックオンリーにしてもらえたら文句なしなのですが。
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今回新しいチューナーを買ったので、SEIKO STX-1 と KORG AW-1 という古いクリップ式のチューナーはお役御免ということにしました。最近のものに比べると、精度も反応も明らかに太刀打ちできません。