道楽者の詩

写真とカメラ、山登り、ギターをはじめ、日々の私情をつらつらと

蛍、ほたる、ホタルの撮影方法

子供の頃は竹ぼうきを持って近所の用水にホタルを捕りに行ったものです。勢い余って用水にドボンして半べそで帰ったこともありますし、蚊帳の周りでホタルを飛ばしていたこともあります。今じゃ専らホタル撮りです。

ホタルの撮影は待ち時間が長いので少々退屈な面もありまして、最初のころはあまり興味をもてなかったのですが、ここ数年は追いかけ回していました。この記事は自分のメモという意味も含め、まとめ的に書きとめておきました。

ホタル撮影は取り立てて難しいことではありませんし、特別なテクニックが必要なわけでもありません。あえて必要なものといえば、それなりの機材と忍耐力とマナーでしょう。決してコンデジや携帯(スマホ)などで撮影しようとは思わないで下さい

 

-------------<記事の目次>---------------

 

 

 はじめに:

ホタルの撮影はさほど難しいものではありません。しかしながらある程度写真として仕上げるためには出来れば三回、少なくとも二回は同じ場所に通う気構えが必要です。なぜかというと、暗くなってから飛ぶホタルを撮るために、ホタルが飛んでいない明るいうちにセッティングを終えておかないといけないという特殊性があって、結果的に数回は通う羽目になってしまうのです。

 

種類や生息地にも寄りますが、ホタルは概ね20~21時頃がよく飛ぶとされています。したがって、多少明かりが残っている頃までに、遅くとも19時には現地入りしておくのが望ましいです。暗くなってホタルが飛び始めてから準備を始めても、決して撮れないわけではないのですが、ピントが合わせにくい、背景を写しにくいなどハードルが高くなってしまいますので、ここでは想定外としておきます。ただ写ればいいというのであればその限りではありません、でもそれじゃあちょっと満足できないでしょう。

 

実際の撮影では、少なくとも準備に30分、露光に30~60分程度はかかるものと想定しておいてください。露光には三段階あって、まず薄暗い時に撮る背景用の写真(前撮り)、ホタルが飛び出してから撮る光跡写真、そして最後に一枚撮るダークフレーム。光跡写真は、ホタルの量や周囲の明るさなどによって、数枚から100枚以上になる場合もあります。

 

撮影後は、自宅に戻って撮影データをパソコンに出力し、前撮りの背景、光跡画像、ダークフレームを重ね合わせて、最終的に一枚のホタルの写真に仕上げます。こうしてやっと一枚の写真が出来上がります。もうお気づきでしょう、通常は一台のカメラで一日一枚と思っておいてもらってまず間違いありません。ですので、焦らず、ゆっくり、撮影したいものです。

 

では順番に詳細を書いていきましょう。

 

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 A:ホタルがいる場所へ行く

ネット検索で生息場所を探すことはそんなに難しいことではありません。誰でも行こうと思えば行けます。岡山では、ゲンジボタルは北房・矢掛・足守などが有名で、平日でも多くの人がホタル見物に来ています。なんとなく、ここ数年でホタルを見ることができる場所が増えてきているように思えます。

ヒメボタル(金ぼたる)は哲多町が特に有名。こちらはホタルも多いのですがそれ以上に人も多く、ホタル保護の観点で管理はかなり厳重です。週末はバスが来る事もあるとかで、土日は撮影禁止となっています。私も最初はここでご指導いただきました。

 

できれば最初はどなたかに連れて行ってもらって、ホタル観察&撮影のレクチャーを受けることをお勧めします。現地では、ホタルに対するマナー、撮影者同士間でのマナー、見物客との間でのマナー、近隣住民に対するマナーなど、撮影以上に気を使うことが多いのです。数回同行すればおおよそのことは分るでしょうから、初心者のうちは四の五の言わずにまずマナーをマスターしましょう

 

A-1:ホタルに対するマナー

ゲンジボタルとヒメボタル(金ぼたる)とでは多少事情は違うようですが、全てのホタルは光を嫌います。人工の光を発光させていると飛ばなくなるといわれ、ひどい場合は、翌年は激減するとも言われていますので、自分の都合でむやみに光を発光させることは控えなくてはなりません。ストロボなんて間違っても発光させてはいけません。少々薄暗い場所でもカメラの操作できるよう、事前に十分練習しておく必要があります。

 

ゲンジボタルの場合は人工の光がある場所でもブンブン飛んでいるので、必要以上に神経質になることはないでしょうが、ヒメボタルの場合は人工光は「厳禁」とされる場合まであります。先の哲多町ではカメラの液晶や携帯の液晶を点灯させると、そのカメラマンは管理人さんによって即刻退場させられます。明るいうちに設定を済ませ、撮影中はカメラに布かタオルをかぶせておく準備が必要です。

 

その他、タバコ、大きな声でのおしゃべりなども、遠慮しましょう。

 

A-2:撮影者同士の間でのマナー

必ずしも早い者勝ちというわけでもないのでしょうが、早い時間から場所取りをして三脚を立ててスタンバイしている人がいます。先に構えている人がいれば、一声かけて画角に入らないよう三脚を設置しましょう。暗い中での撮影なので、他人の三脚に触って動かすことないよう注意しなくてはなりません。と同時に、他人の通行の邪魔にならないように配慮して三脚を立てましょう。私はこれまで3回、三脚を動かされた経験があります。内一回は、邪魔だからという理由で、目を離した隙に他の撮影者によって故意に動かされたようです。。。

 

また、よく問題になるのがカメラのアクセスランプです。ホタルにもよくないうえに、あの光は強烈なので遮光せずに撮影していると、その後方からは他の人が撮影できなくなります。その割には無頓着な人をよく見かけます。是非ともアクセスランプは遮光しましょう(下の写真がアクセスランプの威力です、ホタルの光と比べてください)

私は、黒いテープを2~3枚重ねて貼ってアクセスランプを遮光しています。撮影中はカメラに布かタオルなどをかぶせておくのが望ましいです。

 

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自分の撮影が済んだからといって、LEDで煌々と夜道を照らすということも極力遠慮しなくてはなりません。最低限の光量で、足元だけを照らす程度にしたいものです。

ひどいことに、撮影を終えたあと他の人がカメラを向けている林の中を照らしている人がいました。路肩で撮影していた私に、「誰かいるぞ」とカメラ諸共、直接照射された事があります。

 

A-3:見物客に対するマナー

カメラマン同士なら画角に入らないようお互い配慮するでしょうが、一般の見物客はそんなことは関係ありません。撮影者の都合で見物客に注文をつけないようにしましょう(お願い程度ならいいのかな)。見物客優先です。でないと、カメラマンの出入りに制限がかかってしまうことにもなりかねません。実際に、トラブルが元で撮影禁止になった場所は存在します。

 

 B:撮影に必要な機材・小道具

何をするにもそれに適した道具というのは必要です。カメラにもいろいろありますが、スマホやコンデジではまともには撮れませんので、最初から諦めておいてください。

レンズ交換式のミラーレスのカメラでしたら撮影自体は何とかなるでしょうけど、背面液晶に頼らざるを得ないのでピントを合わせるのが大変です。素直に一眼レフにしておいたほうが無難です。レンズは明るい単焦点レンズがお勧め、ゲンジボタルなら F2.8 通しの標準ズームでも大丈夫です。

 

B-1:必要なもの

  • B1-1.マニュアル露出が設定でき、高感度で長秒露光できるカメラ(一眼レフがお勧め)
  • B1-2.撮影に適したレンズ(詳細は後述)
  • B1-3.しっかりした三脚
  • B1-4.連写ロック可能なリモートスイッチ

これだけあれば最低限の準備はOK

 

B-2:用意するのが望ましいもの

  • B2-1.服装は長袖・長ズボン、靴は運動靴か長靴
  • B2-2.水準器
  • B2-3.レンズのリングを固定するためのテープ(私はマスキングテープ)
  • B2-4.カメラを覆うための布・タオルなど
  • B2-5.夜道を歩くためのLEDライト(光量調整可能なスマホアプリでも可)
  • B2-6.時計(極力携帯・スマホは使用しないほうがよい)

 

 

 C:実際の手順

C-1:位置決めとカメラのセッティング

明るいうちに撮影場所を決めて三脚を立てる。カメラを三脚に乗せてフレーミングを決める、ピントを合わせる、試し撮りをしながら露出等各種設定を完了させる。ピントを合わせたら、ズームリング、ピントリングをテープで固定して、不注意で設定が変わらないようにMFの状態にしておくのがよいでしょう。

フレーミングはホタルが飛びそうなところを狙うか、ここを飛んで欲しいという場所を賭けで狙うか、そんな感じです。ピントの位置は、奥に合わせると手前(の光跡)がボケ、手前に持ってくると奥(の光跡)がボケる。前撮りは別として、ピントが合った光跡というのはたぶんどなたにも分らないので、ピントを何処におくかは前撮りの景色次第です。

 

C-2:背景の撮影

一番ホタルが飛び始めるまでに、背景の前撮りを終了しておきます。必要に応じて、アンダー目に数枚、ホワイトバランスを変えて数枚撮っておきます。経験上、-2.3EV で、太陽光と蛍光灯で撮っておけばたいていは何とかなります。

ISO感度は出来るだけ低めにしておくといいでしょう、私は ISO200~400 程度で撮ることが多い。あまり長く露光すると木の葉などが揺れてしまうからです。

絞り値は好みがあるので一声ではいえませんが、私は2段くらい絞ることもあるし、光跡撮影と同じ絞り値のこともあります。どちらかといえば、操作は面倒になりますが、ちょっと絞って撮っておくのが被写界深度が深くなるので一般的でしょう。いずれにしても最初の頃は、いろいろ試してみることが大切です。

 

C-3:撮影開始

ホタルが飛び始めたら、10~30秒程度の露光で連続して何枚も撮影します。周囲の明るさによってシャッタースピードは調整する必要がありますから、あわてて撮影を開始することはありません。シャッタースピード等、露出設定については後述します。

 

C-4:ダークフレーム採取

撮影が終了したら、レンズキャップを装着して同じ条件でダークフレーム(ホットピクセルだけが写った画像)を一枚撮影しておきましょう。

 

大雑把には、これで現場の作業は終りとなります。
後は、他の人の迷惑にならないように、気をつけて夜道を歩いて帰るだけです。

 

 

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 D:カメラの設定について

上述のマナーのことを考えれば、カメラの設定なんて、光跡を写すだけなら簡単なことです。要求レベルが上がれば、また難しくなっていくのですが、基本は変わりません。まずはカメラの設定において最も基本的なことは、「ホタルの光跡の明るさは、ISO感度とレンズの絞り値だけが関係し、シャッタースピードは全く関係ないシャッタースピードはホタルの光跡の量と、背景の明るさに影響するだけ」、これをきちんと理解&マスターしておきたい。

 

D-1:ISO感度とレンズの絞り値について

撮影の意図、表現の目的によって、設定値は一律ではないですが、基本としては

  • ゲンジボタルなら、ISO800~1600、F4 でOK
  • ヒメボタルなら、ISO800~1600、F1.4(開放)でOK

詳細を言い出せばいろいろありまして、露出を下げれば光跡は仄かな感じになり、露出を上げればより鮮明に写る。さらに、

 

ゲンジボタルの場合
絞りは開放でなくても構わないので、私は通常 F2.8 通しのズームレンズを使っています。F2.8 で撮る事もあれば、F5.6 で撮った事があったかもしれない。その場合は感度で調整して、ISO800~1600 / F4 の露出に収まるように設定します。

焦点距離も影響してきますが、絞りを開けば光跡は相対的に太くなり、逆に絞れば細くなる。また、カメラの近くを飛ぶことが予想される場合には場合はそれだけで太く大きく写るので絞っておく、遠くを飛ぶだろう場合は小さく写るので開いておく。このような微調整を行うこともありましたが、最近は ISO800、F3.5 で撮影することが多いです。

 

ヒメボタルの場合
まずはレンズ開放で撮影します。こうしないと、綺麗な丸ボケが得られません。開放 F1.4 のレンズならISO800~1600に、開放 F2.8 のレンズならISO3200~6400に設定すればよいでしょう。お勧めのレンズは 50mm/F1.4、三脚を自由に設置することが出来るのならば、ヒメボタル撮影にはこれが一番よいです。

 

D-2:シャッタースピードについて

シャッタースピードは、光跡撮影中の背景の明るさに影響してきます。光跡そのものの明るさには関係がありません。背景は予め撮影しておいて光跡をあとで重ね合わせるという作業は、2枚の画像を画素ごとに比較して明るいほうを採用するという「比較(明)」という方法をとるため、光跡画像の背景は出来るだけ暗いほうが望ましいです。

それなりの高感度で撮影するので、長く露光していると背景が昼間のようになってしまって、ホタルの写真とはいえなくなってしまいます。あとで一枚一枚丹念に黒くつぶしていくというのならその限りではありませんが、背景は出来るだけ(少なくとも予め撮影しておいた背景画像よりも)暗くなるようにシャッタースピードを調節するのが適当です。

 

ロケーションや画角によっては、民家の明かりや街灯の明かりの影響を受けてしまうことがあります。時間帯によってはかすかに残っている太陽の明かりが影響してきます。また月の明かりはかなり大きく影響します。ですのでシャッタースピードは、そういった撮影のたびに毎回変化する諸々の外的要因を考慮してを決める必要があります。

 

ではいくらにすればいいのでしょうか?、論理的に説明できないこともないのですが、変数要素が多すぎて話がかなりややこしくなってしまいます。

ここでは「最初のうちはまずは15秒程度で撮ってみて、結果を液晶で見て調整する」としておきます。デジタルの特徴である「撮ったその場で結果を確認できる」という利点を使わない手はありません。背景が明るければ10秒、5秒を試し、背景が十分暗ければ20秒、30秒と長くしていけばいいでしょう。私の場合はものぐさなので、最初から20秒くらいで撮っておいて、ダメなカットは削除するという運用が多い(あまりお勧めはしません)。

 

繰り返しますが、シャッタースピードを長くしても短くしても、飛んでいるホタルの光跡の明るさは変りません。変ってくるのは、背景の明るさだけなのです。もちろん光跡の量と、撮影枚数が変るのは言うまでもありません。

 

D-3:ホワイトバランスについて

連写時のホワイトバランスは、オートじゃなくて、太陽光固定をお勧めしておきます。RAWで撮るのであればあまり気にすることはありませんが、固定のほうが色合いが安定します。

 

D-4:撮影開始

こうして ISO感度、絞り、シャッタースピード、ホワイトバランスを決めて、撮影開始ということになります。ここまでの設定作業(三脚設置~カメラの設定、背景の前撮り)を15分程度で行えるよう練習しておきましょう。

 

撮影を開始すると、私は連写設定にしておいてその場を離れるようにしていることが多いです。逆に連写を使わずに、イスに座って狙った画角にホタルが飛んできた時だけシャッターを切るというスタイルの人もいます。自分のやりたいようにしたらいいでしょう。

 

 

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 E.パソコン上での作業

撮影した画像をパソコンに取り込んで、編集~仕上げの作業の手順としては、

 

E-1:光跡のカットを選別してコンポジット(重ね合わせ)

まずは撮影したホタルの光跡の画像を重ね合わせます。このとき「比較(明)」というアルゴリズムで重ねていきます。この表現は phtoshop 上で使用される表現ですが、今では専用の重ねあわせソフトがフリーで提供されているのでありがたく使わせていただきましょう。星の日周運動を撮影~編集する時にも使用できる優れものです。Adobe photoshop でも出来ないことはありませんが、それよりも専用ソフトをお勧めしておきます。

・Startrails:http://www.startrails.de/html/software.html

・SiriusComp:http://phaku.net/siriuscomp/

最初は photoshop を使用していたのですが、現在はダークフレームの扱いもできる Startrails を使用しています。他にもいろいろあるようなので探してみるといいでしょう。

 

E-2:ダークフレームを使ってホットピクセルのノイズ除去

ダークフレームというのは、連写して撮影した直後にレンズキャップをして同じ条件で撮影したほぼ真っ黒けの画像です。ほぼ、というのは、ホットピクセル(欠損画素)と呼ばれる赤や青や緑の点が写ってくるからそのように表現しました。
光跡画像に写り込んでいるであろうホットピクセルを除去するために、採取したダークフレームと重ね合わせた光跡画像との間で減算処理で相殺させる。ソフトとしては photoshop でも出来ますが、私は上述のように、Startrails で行っています。

ちなみに、ダークフレームは一台のカメラで一夏に一枚あればOKと言っても、言い過ぎではないかもしれません。

 

E-3:明るさの調整をした背景を重ねて、全体的な明るさ調整

出来上がった光跡だけの画像と、予め撮っておいた背景とを重ねます。ここでも基本的には「比較(明)」を使用します。この合成は photoshop で行うのが望ましいです。背景のレイヤーと光跡のレイヤーと、それぞれ独立して調整をかけられるからです。

 

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これでやっと一枚のホタル写真が出来上がることになります。

 

恥ずかしながら自分の作例をリンクしておきます

夏の風物詩:ホタル :
吉備の国放浪記 ~風景写真の撮り歩き~

 

 

 さいごに:

なおこのようなコンポジットで仕上げる撮影技法については、写真家「小原玲」さんが2000年に考案開発されたといわれています。私は特に教えてもらったわけではなく、画像をレイヤーで重ねることは知っていたのですんなりこの方法でやっていますが、ここは小原さんに敬意を表して下記記事をご紹介しておきます。

http://reiohara.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-8846.html

http://reiohara.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-0894.html

 

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