道楽者の詩

写真とカメラ、山登り、ジムニー、ギターをはじめ、日々の私情をつらつらと

露出のお話 #1

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「露出」というのは風景撮影だけでなく写真撮影における基本でありながら、避けて通る人も多いようです。露出の話をし始めると拒絶反応を示したり、気絶してしまうような人をお見受けすることがあります。気のせいかたまたまか、身の回りのご婦人はほとんど気絶状態だったような気がします。

 

露出というのは「写真の明るさを決定するための要素」です。

作者の意図を伝えるために、最も大切なことの一つなのです。

 

写真というのはカメラ内の受光面(古くはフィルム、デジタルでは撮像素子(CCD・CMOSセンサー))に、適当量の光を照射させることで得られる結果(像)です。この「適当量」を決定するのが露出といわれるもので、光を通す筒の断面積と、光を照射する時間で決定されます。

 

時間が一定なら、光を通す筒の断面積が広いほうが多くの光を得られるので、得られる結果(写真)はより明るくなります。

筒の面積が同じなら、照射する時間が長いほうが多くの光を得られるので、得られる結果(写真)は明るくなります。

 

以下、専門用語になりますが、露出に関しては専門用語を覚えたほうが後々楽ですので、是非とも覚えてください。初心者であっても覚える・理解する努力をしてください。

 

・絞り : 光を通す筒の断面積のこと

 絞りを開く ⇒ 光を通す断面積を拡げる

 絞りを絞る⇒ 光を通す断面積を狭める

 

・絞り値(F値) : 光を通す筒の光を通す断面積を数値化したもの

 F1.0=いわゆる素通しの状態

 F1.4=F1.0より面積比で 1/2 になった状態 (光量も半分)

 F2.0=F1.4より面積比で 1/2 になった状態 (光量も半分)

 以降、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22、F32 ・・・ と続きます。

 

シャッタースピード : 光を照射する時間(秒単位)

 

・感度(ISO値) : 撮像素子で受けた光から変換した電気信号の増幅度合い

 ISO100=基準感度

 ISO200=変換した電気信号をISO100に対して2倍増幅すること

 ISO400=変換した電気信号をISO200に対して2倍増幅すること

  以降、ISO800、ISO1600、ISO3200、ISO6400、ISO12800 ・・・ と続きます。

 ※ 録音した音をボリュームつまみで増幅するようなものです。

 

 

・段数 : 絞り値、シャッタースピード、感度において、2倍もしくは半分の差を「一段」と表現します。

 絞り値をF4 から一段絞ると F5.6 となる ⇒ 写真は暗くなる

 絞り値を F4 から一段開くと F2.8 となる ⇒ 写真は明るくなる

 シャッタースピードを 1秒 から一段速くすると1/2秒になる ⇒ 写真は暗くなる

 シャッタースピードを 1秒 から一段遅くすると2秒になる ⇒ 写真は明るくなる

 感度を ISO400 から一段下げると ISO200 になる ⇒ 写真は暗くなる

 感度を ISO400 から一段上げると ISO800 になる ⇒ 写真は明るくなる

 

 

・Av(Aperture value)、Tv(time value)、Ev(Exposure value)

 Av :絞り値(F値)=F1.0 をゼロとして、一段毎に ±1 した値

 Tv :シャッタースピード=1秒をゼロとして、一段毎に ±1 した値

 Ev :Av+Tv (下の表を参照してください)

 

Evが同じなら、F値シャッタースピードの組み合わせが違っても同じ明るさの写真になるということに注目してください( 例: Ev8=2+6=3+5=4+4 )。


 

たとえば屋外晴天の場合は、感度(ISO=100)で、F8、1/250秒 というのが定説です。

これをEvで表現すると、Ev=14 ということになります。逆に Ev=14 であれば、(F4 &1/1000秒)、(F5.6 & 1/500秒)、(F8 & 1/250秒)、(F11 & 1/125秒)、(F16 & 1/60秒)、・・・、どの組み合わせでも同じ明るさになるということになります。

 

ちなみに満月の月の表面を撮ろうとすると、屋外晴天のときの露出とほぼ同じでOKなんです。

 

  Tv 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Av

F値
↓ 秒

1.0 1.4 2.0 2.8 4.0 5.6 8.0 11.0 16.0 22.0 32.0
-2 4 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8
-1 2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 1/2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
2 1/4 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
3 1/8 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
4 1/15 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
5 1/30 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
6 1/60 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
7 1/125 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
8 1/250 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
9 1/500 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
10 1/1000 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

露出値(Ev)=0とは、

基準感度(ISO100)で、Av=0(F1.0) かつ Tv=0(1sec.)で得られる露出(受光量)
 
 
上記の表の値を覚える必要はありません、理屈を理解しておけばOKです。自分で考えなくてはいけないこともありますし、会話の中で必要な場面もあるでしょう。時間を掛けて徐々に身につけていけばよいことです。
 
最近のカメラはよく出来ているので、ほとんどオートでも綺麗に写ります。それはカメラが決めた自動露出(AE)の結果です。風景写真の場合は、撮影に際して作者の意図があることが前提です。カメラの自動露出(オート撮影)は撮影者の意図を汲んではくれません。ですのでカメラに頼りきらず、撮影者が自ら露出などの「撮影の設定」を行わなくてはなりません。
 
風景写真を撮ろうとする人に対して、「オートで撮ってもそこそこ綺麗に写るよ」とのアドバイスは、全く当てはまりません。結果オーライの確率は高いのですが、無責任です。最初はよく分らなくても、マニュアルで露出を設定操作できるように努力しましょうとアドバイスさせていただきます。
 

 

ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める

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古くは、撮影現場で露出計を使ったり、経験から適切な露出値を言い当てる職人芸(体感露出計)のようなことを披露される方も多かったと聞きますが、今ではそんな巧の技は必要ありません。デジタルカメラと現像ソフトの力を借りることができれば、露出値の設定なんて難しいものではないのです。